パステルカラーの恋模様

帰り際に、言った言葉は、涙声で歪んでいた。


「ずっと謝りたかったの。啓、謝らせてもくれなかったじゃない…。あたしが勝手だったって事は認めるけど…でも、苦しかったんだよ?あたしも。今まで…」



本当に何も答えない、動こうとしない啓太。

愛美さんは唇をかみ締めて、部屋を出て行ってしまった。



ドアが閉まる音が、むなしく、バタンと響いた。



足音が聞こえなくなってからは、啓太が出している水道の水の流れる音だけが響いた。

何か、これはドラマで、あたしは、茶の間のテレビでドラマを見ている人みたいだ。



あたしだけ場違い。




ただならない空気に、あたしは何だか鼻の奥がツンとした。

何か、息苦しい。泣きそう。



流れ続ける水。



「……啓ちゃん」



チロチロと、流れ続ける。

切れることなく、流れ続ける。




「……啓ちゃん?」



そっと、何も言わない啓太に歩み寄った。



お人よしなのは分かってる。

でも、あたしには今、こんな事しか言えない。




そんな自分が、大嫌い。
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