パステルカラーの恋模様
「……啓の事か」
鮫島は腕を組み、眉を垂らして聞いてきた。
あたしは、黙ったまま、コクンっと頷いた。
「来たんだって?アイツ」
「うん……」
「何か、悪口言われたんか?」
「違う。でもね、泣いてた」
「誰が?」
「だーかーら!愛美さんが!…あと、啓ちゃんも……」
あたしがそう言うと、鮫島は少し驚いてから、妙に納得した表情で頷いた。
「啓、今日元気なかったよ。そんで、アイツが来たこと聞いた。ずっと哀しい顔してたぜ」
「…そう」
「うん」
沈黙が流れた。
もう、この重々しい“沈黙”には疲れた。
何か喋れ、バカ。
あたしは、ぼーっと壁に貼ってある、ロックミュージシャンのポスターや、楽器、ガラクタみたいなのを眺めていた。
ポスターのボーカリストの、切れ長の目に見据えられて、あたしはちょっぴり怯んだ。