パステルカラーの恋模様

「でも、桃井はそんな啓を鬱陶しがった。重いって。苦しいだけだって」



何それ…。

鬱陶しい?


口を一の字に結んで、憤りを隠せないあたしを、鮫島は「続き」と言って、なだめた。



「啓はもう受かってたけど、一緒に勉強しようって誘ったんだって。しかもその日、桃井の誕生日だったらしくてさ…。お祝いにプレゼントでも買ってたんじゃね?…でもメールの返事は返ってこないまま。んで、帰ろうとしたら、男といるとこを発見!みたいな」



“でも、もう別れた。今は一人よ”



「相手は、高校中退した一個上の先輩でさ。結局桃井は、啓の裏切って、その男とつるむようになったらしい」




そんな過去があったのか…。

その時の啓ちゃん、辛かっただろうなぁ。哀しかっただろうなぁ。



あたしだったら、そんな事絶対しないのに…。




「じゃあ、愛美さんって、高校行ってないの?」


「いや、その先輩と別れてから、定時制の高校に行き始めたらしい。やっぱり、啓の言ってる事が正しかったって気づいたんだろ。で、謝ろうとしたけど」


「啓ちゃんは、“裏切られた”って、話を聞かなかったんだね」






鮫島は、『分ってんじゃん』って顔で、「そーいうこと」とやるせなく頷いた。
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