パステルカラーの恋模様
あたしは、唇を噛んだ。
ひどい。
啓ちゃんの優しさを、踏み潰したんじゃない。
啓ちゃんは、愛美さんの事が好きだから、愛美さんの事を想って心配してたのに。
鬱陶しいって…何?何様?
あたしはポケットに手を突っ込んで、うさぎを手に取り、ぎゅっと握った。
そして、『許せない』って言おうとした時、鮫島が小さく言った。
「でも……あん時は、アイツおかしかったんだよ。マジで、人が変わったみたいだったし。本当は、いい奴なんだよ」
やめてよ。
どうして、庇うの?
「でもっ、そんなの…愛美さんのわがままじゃん!自分勝手じゃん!」
「だから!啓と仲直りすれば、元の自分に戻れるって思ってるって事だろ?今のままじゃダメだから、変わりたいって。だから、来たんだよ、部屋に」
知らないよ、そんなの。
そんな事情なんか……いくらでも美化できるじゃない。
あたしはまた涙ぐんだ。
でも愛美さんの笑顔が頭でちらつく。
“本当はいい奴なんだよ”
そんなの、あたしだって、思ったよ。
思っちゃったよ。
だって啓ちゃんが好きになった人だから。