パステルカラーの恋模様
そして、手に持っていたうさぎを思いっきり投げた。
鈴の音が乱暴に床に投げつけられた。
「知らないよ、そんなの……あたし、知らない」
悔しくて涙が止まらない。
あたしは鞄を持ち、部屋を出ようとした。
すると、鮫島が「まだ終わってねぇよ!」と叫んだ。
あたしは背を向けたまま、立ち止まる。
「だから、お前は啓の未来なんだよ。苦しかった過去を癒す未来なんだよ!だから…お前が支えてやれよ。啓を」
「だって……啓ちゃんは、まだ愛美さんを……」
きゅっと拳を握り、グーの手で涙をぐいっと拭いた。
「それ、本人から聞いたのかよ?」
「……違うけど…でも、泣いてた」
「だから!それは、本人から聞いたのか?」
「………」
あたしは小さく首を横に振った。
何度も振った。
だってあたし、意気地なしで、ちゃんと啓ちゃんに聞くことができないでいたから。
ちゃんと向き合わずに逃げてきたから。
鮫島にそう言われて、ドキっとしたんだ。
心の中を見透かされたみたいで。
「だったら、やれる事あるだろ?」
鮫島はそう言って、足元のうさぎを拾い、埃をはらって、「ほらよ」とあたしに渡した。
あたしは、口をなみなみさせながら頷いた。
うさぎは、ひげをしゃなりとして、変わらず笑っていた。