パステルカラーの恋模様
“まだ、愛美さんの事が好き?”
“啓ちゃんはあたしの事どう思ってる?”
“好きだよ”
伝えなくちゃ始まらない、なんて、自分に言い聞かす。
だけど、こんな漫画に出てくるような励ましの言葉じゃ、この震えはとまるわけないよ。
5階についた。
すると、どこからか、ドアを叩いている音が聞こえてきた。
その姿を見て、思わず口を開けてしまった。
「啓、いるんでしょ?開けて?せめて謝らせて!お願い…っ」
黒いコートを着た愛美さんが、半泣きでドアを叩いていた。
やっぱり、今、あたしはドラマの世界にいるのかもしれない。
しかも、かなりベタな奴。
あたしは、お約束のように鞄を持つ手を離してしまい、鞄は床にどさっと音を立てて落ちた。
愛美さんが、ハッとあたしの方を見た。
あたしは、涙を溜めた大きな目に見据えられて、後ろに怯んだ。
「何で…いるの?」
愛美さんはあたしに近づいてきた。
あたしは、慌てて逃げようとしたけど、愛美さんが「待って!」と叫んだから、小学生の朝礼みたいに、きゅっと足を止めた。
逃げるな、逃げるな、美園。