パステルカラーの恋模様
「愛美さんこそ。啓ちゃん、まだ帰ってないと思いますよ」
今、あたしが着ている、この啓ちゃんと同じ学校の制服が、何だかものすごく価値のあるもののように感じた。
「本当に、付き合ってるの?」
愛美さんは、悲劇のヒロインのように泣いた。
涙、百万粒だ。
「本当は、付き合ってないよ」
何で、あたしは『付き合ってる』って言わなかったのか、自分でもよく分からない。
でも、ガチで戦わなきゃって本能で思ったから。
それにこんな嘘ついたって、むなしいだけだから。
やけに冷静なあたしを見て、愛美さんは、鼻をすすって「本当に?」と呟いた。
「でも、大好きです。啓ちゃんの事。あたしだったら、啓ちゃんを傷つけたりしない。絶対」
「どうして、あんたが知ってるの」
「あたしの事はどうでもいいんです。愛美さんは、啓ちゃんに謝って、一体何がしたいんですか?自己満足?それとも、啓ちゃんの事、取り返したいわけ?また、啓ちゃんを自分だけのものにしたいわけ?」
その瞬間、思い切り平手が飛んできた。