パステルカラーの恋模様
「啓ちゃん、ほっぺどうしたの?」
「え?何かついてる?」
「何か緑のがついてる」
「どこ?」と言うので、あたしは、「ここ」と言って、啓ちゃんのほっぺを触った。
「あ~、今日美術で絵の具使ったんだ!」
「あ、なるほど。絵の具の緑かぁ」
美術は選択だから、あたしは取っていない。
ちなみにあたしは音楽。
「そういえば、啓ちゃん絵うまいもんね」
あの鍵に描いてあった絵だって、こまか~くて、すごい上手だったしね。
啓ちゃんはほっぺを擦って、嬉しそうに言う。
「出来上がったら美園に見せてあげる」
「あらぁ、楽しみにしてますよ、絵描きさん」
「任せとけぇいっ!」
うはっ、張り切る啓ちゃんが何とも言えず…可愛すぎ!
やっぱり、啓ちゃんといると、いつも鼻血が出そうになる。
ティッシュは必需品だわ!
そんなこんなで、あっという間にバス停に着いてしまった。
あたしはバスに乗り込みながら、「じゃあ明日ね!」と手を振った。
啓ちゃんも名残惜しそうに笑って、「うん、明日ね」と言った。
「うん!あ、啓ちゃん、明日楽しみにしててね」
啓ちゃんは頭の上に「?」を飛ばしていた。
きっと啓ちゃん、明日が何の日だか分ってないな?
ま、いいや。
とびきり美味しいのを作って、びっくりさせちゃおう!
あたしはバスに乗り込んでも尚、一人でニヤニヤ。
怪しまれないように、セーターの袖をびよんっと伸ばして、口を押さえた。