パステルカラーの恋模様
あたしは自転車1台立て直すのにも苦労している啓太を見て、ふと思った。



そして、しゃがみ込んでいる啓太のおでこに手を当て、自分のにも当てた。



「熱っ!啓ちゃん、これ熱あるよ!」

「ないない。大丈夫…」


頼りなくへらへら笑う啓太。


「全然大丈夫じゃないじゃん!もうバカっ、大丈夫?!苦しくない?!ネクタイゆるめる?!」

「み、美園…あんま大声出すと、頭、ガンガンする…」

「あ、ごめん…」



心なしか、啓太の息がだんだんと荒くなってきた。


ついには、「本当に、大丈夫…」と言って立ち上がろうとして、またへなへなとしゃがみこんでしまった。



「ちょっとやだ、どうしよう…っ!そうだ、保健室…!啓ちゃん、ちょっと保健の先生呼んでくるから、ちょっと待ってて!」



体調管理くらい、ちゃんとしてよ!

まったく、無理して…。



あたしは立ち上がり、走り出そうとした。

すると、啓太に、くいっと手首をつかまれた。


「え?」

「いいから…いてよ」


とろんとした目に見据えられて、あたしはごくっと唾を飲んで固まってしまった。



やだ、あたしったら。

こんな時に何考えてんの…啓太は病人なんだから!



あたしはそう自分に言い聞かせて、啓太の手をほどいた。



「本当にすぐ呼んでくるから待ってて!絶対だよ?絶対、動かないでよ!」



そう言い付けて、その場を一旦離れた。

保健室まで走る間も、手首をつかまれた時の熱がまだ残っていた。

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