PRINCESS STEP
授業が終わり、校舎を出ると、校門の前に止まる場違いなベンツ……じゃなくて、リムジンを見つけた。
あたし、ベンツは高級車の共通語だと思ってたけど、違うんだよな。
これは、優に教えてもらった事だ。
「お前、本当にやべーのに首突っ込んだな」
隣を歩く琢磨の言葉に、あたしはため息をついた。
「同感、あたしもやべーのに捕まったと思う…思いますよ」
佳奈はバイトがあるとかで、先に帰ったので、今は琢磨と二人だ。
「まぁ………」
すると、突然、少し先を歩いていた琢磨は歩みを止めあたしを振り返る。
「本当にピンチの時は、御曹司だろうが、大統領だろうが、俺がかっさらってやるよ」
「!!」
その言葉に、何故かジーンと胸が暖かくなった。
「ば、馬鹿。大統領は日本にはいねーっての!!」
照れ臭くて、ついお礼を言わずに憎まれ口を叩いてしまう。でも、琢磨は、本当にあたしが困った時、絶対に助けてくれる……。
実際、あたしが族同士の抗争の時、何度も助けられた。
本当は、誰よりも信頼してる。
「お帰り〜」
琢磨と別れて、リムジンに乗り込むと、呑気にもTeaタイムを楽しむ優の姿があった。
「……ただいま帰りました」
そう言ってぐったりとしているあたしを優は驚きを隠せない瞳でじっと見つめる。
「…菜智?」
「はいどうしました?」
あたしは、慣れないことをしたせいか、すごく疲れていた。眠くて、うとうとしながら応える。
「まさか…こんなに敬語が出来るようになるなんて………。壊滅的だったのに!」
そう言って優はあたしの左手に視線を向けた。