PRINCESS STEP
「悪ィ……少し、寝る…………」
疲れ果ててあたしは、ゆっくりと、瞼を閉じた。
「疲れたんだね、菜智。それにしても……正しい敬語のススメ?」
優は、菜智の手から本を引き抜いた。
眠ってしまった菜智の左手に握られていたのは、どうやら敬語を勉強する為の本らしい。
その本を手に取り開く。
「ぷっくく……」
そこには色ペンで付け足された文字が沢山ある。
「…変な日本語を作らない」
確かに菜智の日本語は芸術的だからな……。
自分の言いつけを律儀に守る菜智を見ていたら、氷ついていた筈の心が、溶けていくような感覚を、優は感じていた。
「…本当………、真っ直ぐだね…菜智は…」
そう言って眠てしまった菜智のおでこに優しく触れるだけのキスをした。