【短篇】こ い い ろ 。
04,彼は彼女に堕ちて行く
僕は、どうしたらいいかわからなかった。
04
ある暑い夏の日、ただ、僕は図書館に勉強をしに来ただけなのに。
「ううう、あああああ」
「あの、いい加減泣き止んでくださいよ」
正直困る。
僕が本棚にある参考書を取ろうとしたら、隣にいた彼女とぶつかってしまい、
「すみません」と謝ったら、突然泣き出したのだ。
そんなに強くぶつかったわけでもなかった。
なのに、白い頬を彼女は無数の雫で濡らす。
「うええええ」
……綺麗な顔が、台無しだと思った。