【短篇】こ い い ろ 。
「ああ、また裕也呼び出しかよ」
しかもあんなおっぱいでけー子、なんてさっき裕也に女の子の存在を気づかせた金田が口を尖らせた。
「何よ、そんなこと言うなら裕也に気づかせなければよかったのに」
「そんな訳にはいかねーだろ、つか性格悪いなぁ圭子は」
「悪くないし」
「いや十分悪い」
じゃあ悪いでいんじゃね?と私は適当に返事をして、さっきから放りっぱなしの机の上の空のお弁当箱を重ねる。
そして机に突っ伏せた。シャーペンの芯の匂いがする。
「悪いって認めてんじゃねーか」
「金田っていちいちしつこいよね、だからいつまでも童貞なのよ」
「童貞じゃねーよ!つか圭子こそ処女じゃん」
「……」
あと友達いないし、と付け足した金田の声の後には、バシリという音。そして私の右手にじん、とくる痺れ。
ああ、なんて爽快な音なんだろう。
さっきまでへらへらとしていた金田は痛さを堪える表情を見せている。