【短篇】こ い い ろ 。
 


機嫌が悪い理由は、なんとなーく、わかる。
わたしがさっきからぐちぐちうるさいからだ。
でも、うるさくしてるのも理由がある訳で。



ほんの数十分前のこと。
学校の校門を二人並んで抜けてすぐ、最近なんだか口数が少ない大好きな彼氏の泰輔に、「じゃんけんで負けたほうが、いつも別れる道まで二人分の荷物もって帰ろうよ!」と提案したのが始まりである。

「別にいいけど」

こっちも向かずになんだか素っ気ない返事をした泰輔にちょっと眉間のシワを寄せてしまったが、こんなことでくじけていたら気分屋の泰輔の彼女なんてやっていられない。ここは私が盛り上げていかないと。いつも盛り上げられている方だし。

「よーし、じゃあ、じゃんけんやるよっ」

「ん」

私が一歩前に出て、泰輔の前に立つ。少し背の高い泰輔の顔を覗き込むような格好になったまま、右手を差し出す。泰輔と目が合った。泰輔はすぐにそらして、右手を出す。


「さいしょはぐー、じゃんけんぽん!」








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