【短篇】こ い い ろ 。
 



ああ、だめだ。今すごく「いやー」って叫びそうになった。私はぽかんと開いたままだった口を固く閉じる。服越しだがひんやりと、床の温度が伝わってきて妙に変な気分になる。今日もいつもと変わらず私は高い位置でポニーテールをしていたから、ずっと当たったままの結び目の部分のせいで頭が痛い。顔の周りに残しておいた毛が頬にかかってくすぐったい。今直ぐ髪をほどきたいし、頬にかかる毛を退けたい所なのだが、それを竹本君が阻止している。竹本君はずっと私の手を、強い力で握ったままだ。




 
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