【短篇】こ い い ろ 。
……どうしよう。
真っ先に思い浮かんだのはこの言葉だ。
今日は卒業式前日。中学校3年生で私の想い人である遠藤先輩はもうすぐ卒業してしまう訳なのだが、奥手なわたしは想いを伝える以前に、話した事もそうあまりなかった。
ただ一度、同じ委員会で、2人だけで話した時があったが、あっぷあっぷになってしまい、何も言えずにただ「あー、えっと」とか「うー、その」ばかり言っていたので鬱陶しい女というレッテルをはられていそうでびくびくしていたのだが、卒業式が終わったら、もう会えない。と思うと、用があって1人でいた生徒会室に先輩が「かくれんぼしてんだ。ちょっと隠れさせて」と言って来れば、そりゃあ、チャンスだとしか思えない。
かくれんぼの探す役である人が生徒会室前を通り過ぎたらしく、先輩は「ありがと、じゃあ」と言って生徒会室のドアをあけようとした。その言葉が妙にリアルで、「じゃあ」と言ってもう本当に本当に会えなくなると思うと泣きそうになって、ただ好きというおもいだけが募って、奥手なわたしを積極的にしてくれたらしく、行こうとする先輩の制服の袖を掴んでいた。
「ま、待ってください」