カモミール・ロマンス


昼休みに勇気が翔にメールを送った。

『田崎のテストまじ鬼

歴史なんか知らなくても社会に出て困らないし涙
ユキ』

国語、科学、世界史のテストを消化しただけで勇気の体力は底が見えるほどだ。

「なに死んでんのユキ?」

勇気の席を通りかかった美咲が呆れ顔でいう。

「うっせ、頭の良いヤツにこの気持ちが分かってたまるか……」

美咲はクラスでも5番以内、学年でも200人中で15番くらいにいる。

ちなみに勇気は下から数えた方が早い。

「ならナオに相談すれば良いじゃない」

美咲はさらっと言うが勇気の胸に何かが突き刺さる。

「ナオは授業聞いてないくせに赤点は必ず逃れるから、オレの気持ちは分からない……」

「そういえば何だかかんだで追試受けてなかったわねナオ」

「うぅー、オレには翔しか居ないんだ。赤点を見せて「実は僕も」って微笑んでくれるのは翔だけなんだ!」

気迫のこもった勇気の熱弁にも、美咲に湧いたのは単に哀れみの感情だけだった。

「何なのその悲しい仲間意識。そんなこと言ってるヒマがあるなら次の英語の勉強でもしなさいよ」

呆れて手をあげた美咲を、あっかんべーで送る勇気だった。
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