カモミール・ロマンス


ガタッ。といつもの場所でバスが揺れた。

「ぐぉおっ!?」

その揺れで目が覚める勇気。

変な声が出てしまって、途端にカバンで顔を隠した。

手持ちぶさたになると、ポケットに手を突っ込んで携帯を確認してしまうのは癖になっていた。

「あ、翔からだ……そっか明日も休みか」

パタンと携帯を閉じる。

「日延びたなぁ……もう夏なんだよな」

まだまだ熱く街を照らす太陽を横目に見ながらそう溢していた。

「なんか楽しいこと起きねぇかなぁ……あの子とまた話したいな」

いつまでも鼻の奥をくすぐる、りんごの匂い。

無意識に出るため息。

勇気は朱色の太陽に手を合わせて願ってみるのだった。




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