カモミール・ロマンス

「同じ2年生なんですね。なんかちょっと嬉しいです」

そう言って笑顔を向ける沙織に勇気は顔を赤くする。

「どうかしました?」

そうして顔を俯かせた勇気を心配した沙織が、勇気の顔を覗き込む。

「な、ななな、なんでもないです、はい。

ただ、その……すっげぇ笑顔が可愛いなぁと思って」


「……えっ」


勇気は良くも悪くも正直者である。

発する言葉は正直な気持ちであって、大体の場合がそこにややこしい意図などは含んでいない。

そんな真っ直ぐな勇気の言葉に沙織も顔を隠す様にして、誰も居ない砂場を見つめる。

「あ、さっきの……

おじいさんに股がどうこうとか言ってましたけどあれって何なんですか?」

バスから転んでしまったおじいさん。

なんとか立ち上がることもできたが、沙織は確かにそう言っていた。

「お年寄りは股関節を痛めやすくて、軽く転んだだけでも歩けなくなってしまったりするらしいんです。

頭をぶつけてないか、手をひねってないかを確認するのも大事なんですけど、同じくらいに股関節に痛みがないかを確認するのも大切なんだそうです」


勇気はハキハキと答える沙織に少し歓心すら覚えていた。


< 124 / 228 >

この作品をシェア

pagetop