カモミール・ロマンス

「そういうのって学校で勉強したんですか?」

「いえ。私本を読むのが好きで、小説とかも読むんですけど、色んなジャンルに手を出してて……

今回はたまたま最近読んだ本にそういう内容が書かれていて、ちょっと出しゃばっちゃいましたかね?」

両手の指を重ね、それを見つめる沙織。

勇気は思い切り首を振る。

「そんな、出しゃばっただなんてそんなこと絶対に無いですよ。

ああいう時に声をかけるのって凄く勇気がいるのに、沙織さんは凄いと思います」

沙織を真っ直ぐに見つめて言う勇気。

沙織は勇気の目を見て、笑ってうなずいた。

「でもユキくんだってすぐに駆け寄ったじゃないですか。私もユキくん凄いなって思いましたよ。

それに、おじいさんの背中をずっとさすって、優しく声をかけて……格好良いなって」

小さな声だった最後も勇気には届いていた。

勇気は沙織を見つめることができなくなって、家と家との間に沈んでいく太陽を見る。

「うち来週から夏休みなんですよ。だから今、期末テスト中なんですけどね。

そしたら友達がヘルパンギーナ?とかいう夏風邪にかかっちゃって……」

ははは、と笑う勇気。

沙織はすぐに返す。



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