カモミール・ロマンス
「えっ、今テスト期間中だったんですか!?」
急に慌てた様子の沙織が立ち上がる。
「そんな……私と話す為に勉強する時間が無くなっちゃったらいけないですよね。
私ももうすぐ塾だし今日は……」
ペコッとお辞儀をして歩きだす沙織。
もう少しだけで良いから話していたい。その一心で勇気は思わず沙織の腕を掴んでいた。
「……ユキくん?」
沙織は振り返る。
勇気はしばらく掴んだその腕を見つめていた。
そして何がきっかけだったのか我に返った勇気は、沙織の腕をバッと離す。
「え、あれ?ご、ごめんなさい。何て言うかその……もう少し一緒に話したかったから、その……
乱暴なことして、ごめんなさい。」
頭を下げる勇気。
改めて見た沙織の表情は、何も読み取れなくて、勇気は不安になる。