カモミール・ロマンス




ピロリロリー♪ピロリロリー♪……


初期設定そのままの着信音が翔の部屋に鳴り響く。

熱が下がった後のぼーっとした頭をどうにか持ち上げ、電話に出る。

「もしもじ……」

「もしもし山田先輩ですか?」

「えっ……美優ちゃん?」

電話越しの声は初めてで、翔は耳がこそばゆくて、無意識に鼻をかいた。

「サッカー部の森くんに聞いたんですけど、風邪ひいてるんですか?

電話とか迷惑かなと思ったんですけど、心配で……」

「ありがとう、すごい嬉しい」

不謹慎なのは分かっていた。

でも家族の言葉より、友達のメールより、ただ好きな子が心配してくれているただそれだけが何よりも嬉しかった。

夏風邪なんて決して楽しいものではなくて、しんどいし食事もできなくて辛かった。

だけど美優からの連絡が来るきっかけになったことに、少しだけ感謝する翔。


「まだ体しんどいですか?」

遠慮ぎみの小さな声。

「ううん、もう大分良くなってきたよ。

美優ちゃんの声聞けたからかな……なんちゃって、はは」

冗談の様に言ってみたが美優からの反応は無かった。


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