カモミール・ロマンス


それは終業式でのこと。


通知表をある程度の仲間と見せ合った後、何気なくプールを見ながら勇気の言った一言が始まりだった。


「もうすぐ夏休みだ。夏休みと言えば一夏の経験だ。

一夏の経験といえば海だ。


そうだ、海へ行こう」


よく分からない方程式と、あまり有名でないローカルCMのフレーズを真似てドヤ顔で言い放った勇気。

1学期を乗り切った疲れからか、それとも安堵からなのか突っ込みはない。



「あー……海か。そういえば去年も行きたい行きたいって言ったけど、結局行かなかったよね」

「そーね。私は行っても良いけど、あんた達補講とか大丈夫なの?」

美咲の一言に目を見合せて、目をパチクリする勇気と翔。

「……海といえば水着だよな。翔一緒に買いにいこうよ」

「そうだね、今度の日曜は部活も無いしいこうか」

全く美咲と目を合わせようとしない2人。

どうやらある二文字を意識から消しているようだ。

「あんたらねぇ、現実逃避してないで現実見なさいよ。

結局、幾つ補講あったのよ?」

美咲の言葉に目を見合せて、にへらと笑う勇気と翔。

そしてゆっくりと美咲を見る。

「オレ、3教科」

「僕は休んだ分の再試も含めて8教科」




「うん、まずはそれ消化してから海とか言おうか」

優しい美咲の口調に(見たくなかった現実を見てしまって?)涙が出てしまった勇気と翔なのだった。






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