カモミール・ロマンス
とある港町。
防波堤と停泊する小型の船。
絶え間なく聞こえる波の音。
裏打ちをするかのようなカモメの自由な鳴き声と、どこからともなく聞こえるラジオの音。
山の麓の駅から続く、海へと下る坂の中。
隣接する住宅の迷路。
行けども行けどもあるのは民家と袋小路だけ。
「ねぇ、本当に海に繋がってるの?この道」
「ていうかこの家さっきも来なかったっけ?」
聞こえる波の音は延々とリピートされ、単調なリズムで4人を包み込んでいる。
「繋がってないなんてことあり得ないだろ?
全ての道がローマに繋がってるなら、この道だって海に繋がっているに決まってる!!」
「ってかここまで来たら意地でも海に入らなきゃ、やってらんないよね」
珍しく先頭を歩いていく直也。
勇気がそれにすぐに続いて、美咲と翔が顔を見合せてからついていく。
熱い日差し、なま暖かい風の運ぶ磯の香。
どこからともなく聞こえるラジオの音。
ゆっくりと昇っていく太陽がこの日一番高い場所から照らしていた。