カモミール・ロマンス
誰もいない海で夕陽に照らされる勇気と美咲。
潮騒は美しく、昼間とはまた違う輝きで波が光る。
すると砂に埋もれたまま2人を見つめる直也の元に翔が戻ってきた。
「あらら?何か良い感じになっちゃってる?」
手に綺麗な白い巻き貝を持った翔がそう言う。
直也は何も返さずにただ2人を見つめていた。
「……ごめん。不謹慎だったかな?」
「いいや。ただ……
オレは幼なじみだし美咲のことを応援してやりたいんだけど、こればっかりはな。と思って」
「……そうだね。しかも本人まだ自覚してないっぽいし。
瀬谷先生が好きって言いながら、美咲がいつも目で追ってるのってユキのことだもんね」
翔と直也は口をつぐむ。
お互いに言いたいことが分かっているからなのか、波に揺れる2人に余計な言葉を伝えないためか。
ゆっくりと沈んでいく夕陽をただひたすら目で追うのだった。