カモミール・ロマンス

昼休み屋上。

弁当を玄関に置き忘れ、珍しく購買でパンを買ってきた勇気が屋上にやってきた。

青空に小さな鳥が二羽飛んでいる。

「あれ、ナオだけ?翔と美咲は?」

仰向けに寝そべって目を瞑っていた直也が視線だけを勇気に向ける。

「美咲は知らない。翔なら例の彼女のとこ」

「ふーん……」

勇気は何事もなく直也の側に座った。

袋からカレーパンを取り出そうとした手がピタリと止まる。

「……ん?彼女?」

勇気はまるでサビてしまったブリキの人形の様に、首を直也に向ける。

「翔に彼女ができたの!?いつ?もしかして例のサッカー部の先輩の妹?」

寝そべる直也の襟を掴んで、グラグラと揺する。

「ちょ、ユキ落ち着いて。ちゃんと説明するから、とりあえずグラグラ止めて」

「――!あ、悪い」

直也の襟を掴んでいた手を離す勇気。

直也は少しよれてしまった襟元をなおす。






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