カモミール・ロマンス
執事とタルトと
夜11時35分。
『ピロリロリー♪』
ベッドに入ってうとうとしていた勇気の携帯が鳴った。
その着信音に勇気はバッと飛び起きる。
それはある人からのメールにだけ鳴る様に設定された曲だったからだ。
勇気は携帯を開き、届いたばかりのメールを読む。
『こんばんは。
今予備校が終わりました。
来週の文化祭だけど、少しだけなら顔出せそうです。
準備とか大変だろうけど、楽しみにしてるから頑張ってね。
沙織』
読み終えた手がプルプルと震え、勇気は声にならない叫びをあげながら両手でガッツポーズをした。
「やばい……超楽しみ。やばい……文化祭やばい」
勇気は携帯を閉じて、また布団に入った。
目を瞑ると沙織のことばかりを考えてしまって、自分でしてるのに照れてしまう。
「……ああ、早く会いたいよ」
小さな呟き。
半月より少し欠けた月がカーテンからほのかな光で照らす。
そんな光の中で勇気はゆっくりと眠りについた。