カモミール・ロマンス
それから約四十分後、ようやく喫茶店に入る。
教室を改造した喫茶店は、想像を遥かに越えるクオリティーになっており、入ってきた客を驚かせてくれる。
何よりも
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」
学校指折りの美男子が勢揃いで迎えてくれるとあって、女生徒の目はもうハートマーク一色である。
テーブルに案内されると、ごく自然に椅子を引いてもらったりなんかして、気分はもうお姫様だ。
「……えっと。なになに……?
ご注文の際は、気に入った執事を名前でお呼びください?」
辺りに飛び交うのは、普段は名字で呼んでいる憧れの男子を下の名前で呼ぶ声。
「た、孝則(たかのり)、紅茶とチーズケーキを持ってきな……持ってきてください」
ほとんどは下の名前で呼ぶだけでいっぱいいっぱいで、語尾が可笑しくなったり、敬語になってしまったりしている。
「ふーん、面白いこと考えるのね……
あ!」
美咲が店内を眺めていると、窓際であくびをしている執事を見つけた。
美咲はその執事に向けて手を挙げる。
「直也、直也!」
直也はそれに気付き、少しだけ驚いた様な顔をして、ふっと笑った。
「ご注文はお決まりですか?お嬢様」