カモミール・ロマンス

「カフェオレとタルトが欲しいわ」

美咲が意地悪そうに言う。

直也はメモに注文を書く。

「かしこまりましたお嬢様。食後には軽い運動をなさらないと、お太りになってしまいます。

お気をつけください」

直也はそう言い捨ててキッチンへと向かった。

「お嬢様に喧嘩売る執事ってありなの?

……はぁ」

美咲はふとあの手紙を思い出してしまった。

誰からかも分からない手紙。

分かるのは、あの手紙を送ってきた人は美咲のことを良く思ってはいないと言うこと。

「きっとその子も今日は桜宮祭を楽しんでいるんだろうなぁ……

なんだかなぁ」

美咲は真っ白なテーブルクロスに顔を埋める。

新品の匂いがした。

「…………

おやおや、お嬢様はオネムの時間の様でございますので、このタルトは私が頂いてしまいましょうかね」

いつの間にか美咲の向かいに座っていた直也。

タルトをさっくりとフォークですくう。

「お嬢様のおやつを失敬する執事ってどうなの?ねぇ?」

美咲は口に運ぼうとしていた直也の腕をがしっと掴み、阻止する。


「私はお嬢様のお身体を心配して……」

「うっさい、カロリー計算してちゃんと食べてるわ!」





< 162 / 228 >

この作品をシェア

pagetop