カモミール・ロマンス

直也は、男の大盛くらいの量をいつも食べておいてカロリー計算も減ったくれもあったもんか。
と口にするのをどうにかこらえた。

ゆっくりとフォークの向きを変え、美咲の口に運ぶ。

「「「ざわっ」」」

直也の行動に一瞬店内が騒めいた。

「え、あんなサービスもしてもらえるんですか?」

「え、あ、いや。ああいったサービスはしていないんですが、その……

な、直也ちょっと来い」

孝則が直也に詰め寄る。

直也は鼻で息を一つついて、ゆっくりと立ち上がった。

「皆心配してる。抱えきれない荷物なら隠すなよ、オレ達はいつでも持ってやる準備はできてるんだから」

直也は孝則に連れられて奥へと消えていった。

美咲はカフェオレに口もつけぬまま、タルトもほとんどを残して、そそくさと喫茶店を後にした。








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