カモミール・ロマンス
「少し歩こうか?」
途端に胸の高鳴りは治まっていた。
「うん」
2人はゆっくりと塀沿いに歩いていく。
他愛もない話をしていると時間があっという間に流れていった。
少し肌寒いくらいの風で、沙織の黒髪がふわりと揺れる。
2人だけの香りが舞って、遠くの空に一羽の鳥を見た。
「あ、もうこんな時間だ」
校庭の端のベンチが空いていたので、座ろうとした時。
校舎の真ん中に設置された時計を見て、沙織がそう言った。
「そっか、この後も予備校があるんだったっけ?」
「うん、そうなの。ゴメンなさい、ちょっと友達に電話させてもらうね」
勇気が頷くのわ見て、沙織は近くの木陰に移動し携帯をとりだした。