カモミール・ロマンス


沙織と香代がバスに乗った頃。

勇気はあのベンチに寝転がって空を仰いでいた。

「ふぅ……」

思いは実らなかった。

しかし沙織は真剣に受けとめてくれた。

それがただ嬉しかったし、後悔は少しもなかったのだ。

「……?焼きそばの匂いがする」

勇気が起き上がるとそこには美咲と直也と翔の姿があった。

美咲は勇気に焼きそばを手渡す。

「はいこれ、3人からの傷心見舞い」

「はは……傷心見舞いにしちゃあスパイシー過ぎるだろ」

4人が笑う。

勇気は割りばしを開いて、焼きそばを口に放り込む。

辛口ソースのピリっとした辛みが効いていて美味しかった。

「ユキ、なんか清々しい顔してる」

疲れたのか、だるいからなのか直也が勇気の隣に座りながらそう言った。

翔は勇気の目の前に尻をついて座る。

「ユキ、楽しかった?」

いつの間にか半分は無くなっていた焼きそば。

「うん、すっげぇ楽しかった」

勇気の豪快な笑顔。

3人は顔を見合わせて微笑む。

「さ、文化祭も終わったら2年なんてあっという間に終わって、3年生になっちゃうわよ」

「うわ、そしたら僕たち受験生じゃん。信じられない」

「その前にユキと翔は進級できるかが先だけどね」

4人の笑い声が響いて、少しして文化祭終了の放送が流れた。



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