カモミール・ロマンス
ひらひらと舞い落ちてくる花びら。
右、左、右、右。
また右にいったかと思ったら今度はぐんと左に。
花びらは美咲をからかうようにひらひらと揺れて、美咲は思い切り手を伸ばした。
「私は女の子。「男女」なんかじゃない!」
手のひらに花びらが触れた瞬間に、美咲は手を握り締める。
ひらっ。
「――あっ、うそ。
いやっ」
花びらは手のひらから逃げ出して、地面に着くまでに美咲は三度挑戦したが、花びらをキャッチすることはできなかった。
「そんな……
じゃあ、私はずっと「男女」のままなの?」
美咲はまた桜の木を見上げた。