カモミール・ロマンス
桜の木から返事はない。
美咲が悲しくなって目にいっぱいの涙を溜めた時だった。
「やっほ。何してるの?お嬢さん」
美咲よりも5センチは背の低い直也が、花びらが一枚も欠けていない桜の花を差し出していた。
「なによ、あんたまた私を「男女」だってからかいに来たの?」
美咲は溜まってしまっていた涙を、服の袖でぬぐう。
「私は女の子なんだから!
「男女」なんかじゃ、ないんだからね!!」
美咲はそう大声を出して直也に言うと、俯いた。
直也は目をパチクリとさせる。
「何当たり前なこと言ってんの?美咲が女だってことは分かってるよ」
直也の言葉に美咲はキッと睨む。
「じゃあ何でそんなこと言うの?
私本当に嫌なのに。男の子なんて……
男の子なんてみんなみんな大嫌い!!」