カモミール・ロマンス
翔は鼻から息を吐いて、眉をひそめながら微笑んだ。
「ずるいなぁ……
そんなこと言われた後じゃ怒れないじゃん」
「え、翔?
あれ?なんかゴメン」
「…………。
いーよ」
翔は俯いて手の平を見つめていた。
握って、開いて、握って。
相手の幸せを願って、また握って。
「ユキなら僕は手を開いていても大丈夫だと思ってるから」
「へ?なんの話?」
翔は笑いながら目を瞑った。
勇気が翔を揺さ振る。
「なあ翔、なんの話?
なぁ?なぁ?なあ?」
バスが揺れ、スクールバッグも一緒にゆれていた。
その中でマナーモードにされた携帯がメールが届いたことを告げるのだった。