カモミール・ロマンス


翔は鼻から息を吐いて、眉をひそめながら微笑んだ。

「ずるいなぁ……

そんなこと言われた後じゃ怒れないじゃん」

「え、翔?

あれ?なんかゴメン」

「…………。

いーよ」

翔は俯いて手の平を見つめていた。

握って、開いて、握って。

相手の幸せを願って、また握って。


「ユキなら僕は手を開いていても大丈夫だと思ってるから」

「へ?なんの話?」

翔は笑いながら目を瞑った。

勇気が翔を揺さ振る。

「なあ翔、なんの話?

なぁ?なぁ?なあ?」

バスが揺れ、スクールバッグも一緒にゆれていた。

その中でマナーモードにされた携帯がメールが届いたことを告げるのだった。








< 197 / 228 >

この作品をシェア

pagetop