カモミール・ロマンス
「もー、なんだよナオ。人が盛り上がってるのにさぁ」
勇気はプンスカとナオに詰め寄る。
ナオはそんな隙だらけの勇気の手からカレーパンを取って口に運ぶ。
「はいはい、悪かった悪かった。
この時期にやってるってことは岡本次郎かな?
あとで作品集貸してやるよ」
そう言って直也は勇気に一口かじったカレーパンを返す。
「なに?ナオって美術に興味あったの?美術の成績オレと対して変わらないじゃん」
直也の美術の成績は4だった。
良くはないが悪くもない。
「いや、だってほらナオって居眠りしてて課題こなしてないから」
「じゃあ何で課題全部出してるオレよりナオのが成績良いんだよ!?」
勇気の至極まっとうな質問に、翔は語尾を濁す様にしていう。
「いや2年の後期にナオがプリントの裏に描いた龍の絵、あれ美術の坂元先生が自宅に持って返ったらしくて……
ナオは確かに課題やってないけど、それ以上のものを提出した、というか、なんというか」
翔の説明にも納得がいかない勇気は直也を睨む。
そんな勇気を見て直也が言う。
「ユキのは絵画じゃなくて落書き。課題は提出したわけじゃなくて、逆に提出したことで今後の課題が溢れちゃっただけだから」
プチッ。と勇気の中で何かが切れる。
ワナワナと震える勇気が立ち上がり、空いっぱいに響く声で叫んだ。
「ナオのバカぁぁぁぁあ!!」