カモミール・ロマンス


翔は初めて直也が弱々しく思えた。

誰でもするであろう格好。

ただ眠いだけかもしれない、目が疲れたサラリーマンだってソファに寝そべったらこんな格好もしているだろう。

だが、そんな格好を直也が人前でしたことに翔はビックリしたのだった。

「欲しい物は全部持ってる。か……

オレの一番欲しい物は、あいつが見もしないで側に抱えてるのにな」

「…………ナオ?」

柔らかな風が舞い、空に一粒のピンクが混じった気がした。

あるはずのない桜が直也の中で揺れている。

今までも、そしてきっとこれから先も。

きっと。







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