カモミール・ロマンス
君が司令塔
「集合!!」
グラウンドの真ん中で翔の声が響いた。
渡部コーチの隣で、声を出した翔。
まだまだ頼りない部分もあるが、キャプテンとしての仕事をこなしている。
「それじゃあコーチからお話を頂きます。
渡部コーチお願いします」
渡部はゆっくりと一歩前に出た。
桜ノ宮附属高校は万年一回戦負けの弱小チーム。
弱いだけならまだしも、年々部員数は減り、去年はベンチメンバーも含めギリギリの15人。
11人いた上級生(うち1人、笠井は途中でマネージャーとなったが)は卒業してしまった。
今は3年生は翔だけ。
2年生は3人。
部活紹介で翔が頑張ったおかげなのか、新入生はチームとしてギリギリ足りる7人が入った。
「あー、皆も分かっている通り、うちはベンチメンバーすら居ない状態だ。
言うまでもなく不利。しかし不利なチームが必ずしも弱いわけではない。」
しかしそんな状態でも翔の中には希望があった。
新入生が7人入ってくれて、ちゃんとしたチームとして試合に望めること。
そして。
「山田新キャプテンの指導の元みんな頑張って欲しい」
渡部の言葉に「はっ」と鼻で笑った新入生が1人いた。