カモミール・ロマンス


校門を出ると声がした。

その方を見ると、そこには美優の姿があった。

「美優ちゃん。

もしかして待っててくれたの?」

美優の顔を見て翔は胸の奥にあるそれが和らいだ気がした。

目を背けているだけだとは思いもしないで。

「はい、翔くんのこと待ってました。

一緒に帰りましょ?」

「うん!」

小走りで美優の傍に駆け寄り、翔は美優に手を出した。

美優は笑顔で手を繋ぐ。


「聞いてくださいよ。今日ね……」


他愛もない話。

今はただサッカーのことを考えなくて済むことが救いだった。

少しだけ後ろめたい夕暮れ。

輝く様な美優の笑顔が胸をざわつかせる。






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