カモミール・ロマンス


とはいっても、翔はいわゆる草食系である。

だからもっぱらその事を気にしているのは美優の方であった。

「……ん?

美優ちゃんどうかした?」

意識しだすと気になってしまうもの。

美優は赤く染まりそうになっている顔を隠すように横を向く。

「な、なんでもないです。

なんでも……」

翔の顔をみると無意識に視線が唇にいってしまう。

そんなことで一人でドキドキしている自分がなんだか厭らしくて 嫌だった。

「…………」


翔は急に右の手が温かくなるのを感じた。

翔は笑って
その手をぎゅっと握り返す。

手を繋ぐと何故だか口数が少なくなったりする。

言葉はすごく便利で、行動で示すべきことだって人は横着して簡単でありきたりな言葉にしてしまったり。

なのにどうしてか手を繋ぐ、たったそれだけのことが多くの言葉よりも気持ちを伝えたりもする。

手を繋いだ時、抱き締めたときに言葉がなくなるのは、互いに伝えあう言葉よりも多くの気持ちを、一つでも取りこぼしたりしない様に耳をすますからなのかもしれない。







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