カモミール・ロマンス
「はー、もう無理。花は摘んだんだし諦めようよ」
最初に音を上げたのは美咲だった。
手のひらの中で少しだけ萎れてしまった花を差し出しながら。
「確かに栞にする為の花は採ったんだしもう……」
ちらりと見た勇気の真剣な表情に翔は最後の言葉を飲み込んだ。
「ユキ……」
ワイシャツもぐちゃぐちゃ、ズボンは泥で汚れて。
それでもただ一生懸命にそれを探している。
「なぁナオ。探さないんだったら退いてくれないか?その辺もやっぱり見てみたい」
勇気が膝をすりながら直也の側に来てそう言った。
直也はふぅとため息を吐く。
「分かったよ。退けば良いんでしょ。退けば……ほら」
直也が足を退けた場所は靴の形に葉っぱが押しつぶされていた。
「……あった。」
震えるような勇気の声。
「あった四つ葉だよ。あったー」
靴の形の跡の中、それは健気にもしっかりと茎を伸ばしていた。
「見ろ、見ろよ美咲。四つ葉だよ、四つ葉」
にかっ。と豪快な笑顔を見せながら四つ葉を見せる勇気。
「うん、ありがとうユキ」