カモミール・ロマンス


お弁当も途中に駆け出した勇気。

三階の踊り場で瀬谷を見つけた。

「せっ、せんせー」

ゆっくりと振り向く瀬谷。

「あれ?中山くんどうしたの?そんなに慌てて」

瀬谷は絵に書いたような笑顔でにっこりと笑う。

「…………」

無言のままじりじりと瀬谷ににじり寄る勇気。

「……?中山くん?」

もう顔と顔がくっついちゃいそうなんです、ってくらい近づいた勇気。

くんくん。

「えっ、中山くん?」

そして匂いを確認した勇気が瀬谷から離れて一言。

「先生のハレンチーー!」

「えっ」

だっと走り去って行った勇気を瀬谷が額に汗マークを付けながら見送っていた。





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