カモミール・ロマンス
屋上へと戻ってきた勇気は泣いていた。
「うっ、うぅ……卑怯だ。男なのにあんな良い匂いがするなんて」
「そうなのよね。瀬谷先生が近くを通ったりすると、ふわって良い匂いがして、キュンってしちゃうのよね」
泣く勇気をなだめる翔。
美咲はまた明後日の方向を見ながらキラキラと目を輝かせている。
そして、あの男が立ち上がる。
「ふっ、甘いなユキ。オレが本物のあら探しってやつを見せてやる」
いつになく真剣な表情で立ち上がった直也。
「あ、あれは直也の本気の目。ふふふ、これは何かが起こるぜ」
直也の表情を見て泣き止んだ勇気。
「ナオさっきから真剣な表情で腕組んでたと思ったら、あら探しの方法考えてたんだね」
さすがの翔もこれにはちょっぴり呆れ顔だった。
なんせ直也のこれほどまでに真剣な表情を見るのは半年ぶりくらいだったからだ。
「それじゃあ、行ってくるぜ」