カモミール・ロマンス



「あー、いやぁ。その」

いざ聞こうとしてみると妙に冷静になってしまった翔。

(はは、何してるんだろ僕……)

「……?」

いきなり苦手なものは何ですか?と聞くのはなんだか躊躇われて。

ふと目に入った卵焼きを見て言う。

「瀬谷先生は醤油派ですか?砂糖派ですか?」

職員室にまで来てくれた生徒からの予想外の質問にも、瀬谷の笑顔は崩れない。

「ああ、卵焼き?実家は母が醤油入りを作ってくれたんけど、僕はあまり得意じゃなくてね。自分で作るのは砂糖を入れた卵焼きだよ」

「え、先生って自分でお弁当つくってるんですか?」

瀬谷の弁当はバランスや彩りがきちんとしていて、とても男の料理とは思えないものだった。

「あぁ、好きなんだよね料理。お弁当箱におかず詰めていく時が絵を描いているみたいで楽しくて」

「はぁ。先生って料理までできて凄いですね。」

「いや、大したもんじゃないから」

そう言って瀬谷は笑った。




< 36 / 228 >

この作品をシェア

pagetop