カモミール・ロマンス
勇気や直也に焚き付けられて、しぶしぶと来た翔だったが、瀬谷を前にして純粋にその質問をしてみたいと思っていた。
「先生みたいに何でも出来る人でも、苦手なものってありますか?」
まっすぐ瞳を見つめながらの質問に、瀬谷は一瞬驚いた。
しかし、すぐにいつも通りの笑顔を見せ言う。
「苦手なものか……そうだねえ。沢山あるよ。というか得意なものの方が少なくて困っちゃうよね。」
翔にはその答えは意外というか納得がいかなかった。
「そんな。だって先生は頭も良いし落ち着いてるし、優しくて生徒からの人気者だし、背も高くて格好良くて……お弁当まで手作りで、それなのに」
翔は恥ずかしくなって目をそらした。
一瞬の沈黙すらも何だか自分が子供に思えてしまって、翔はまた視線を瀬谷に戻した。
どうやら瀬谷はずっと翔を見つめていたようだった。