カモミール・ロマンス
瀬谷はぱくりと一口でその卵焼きを食べた。
「じゃあ人生80年ってどう思う?」
苦手なものを聞いただけなのにいつの間にか、卵焼きから人生の話に。
困惑している翔を見ながら瀬谷は笑っている。
「長い……かな。あと60年ちょっともあるんだなー。って凄い遠くに感じます」
「そうだね。……でも僕は80年なんて言わずに100年でも200年でも生きていたいって思うんだ。同じものも見る人が違うだけでこんなに違う」
瀬谷は引き出しに定規を戻す。
「だから最初の質問に戻るけど。大事なのは苦手なものが何か、じゃなくて、それをどうやって克服していくのか、折り合いを付けていくのかだと思うよ」