カモミール・ロマンス
「あれ?沙織(さおり)また香水変えた?この前の気に入ってたみたいだったのに」
勇気達の後ろを通り過ぎていく2人の女子高生。
緑色の可愛らしいラインの入ったチェックのスカートにブレザー。
襟元には赤いリボンを結んでいる。
「うん、この前のやつは調度使いきったから、今日はベルガモットって言う精油を使った香水にしてみたんだ。香代(かよ)はこの香りどうかな?」
「良い香りだね。でも私は、この前の……カモ?カモル……?」
髪を両サイドで2つに縛った小柄な藤原香代。
香代はあいまいな記憶を必死に思い返す。
「カモミール。カモミール・ローマンっていう精油だよ。りんごみたいなフルーツっぽい良い香りだったでしょ」
背が高く黒い艶のある髪を背中まで伸ばしているのが進藤沙織。
2人は地元では有数の進学校に通う生徒である。
「……あ、またいた」
沙織はバス停で待っている中の1人を見て笑った。
「あれどこの制服かな?私立っぽいけど」
すれ違い様に香代がその制服を覗き込んだ。
「桜ノ宮大学附属?聞いたことないな」
「んー?私も知らないや」