カモミール・ロマンス
「ふふふん」
決勝戦で負けたというのに何故か上機嫌な直也。
決勝戦を終えた3人が二階席へと戻ってきた。
「ナオ達お疲れー」
「あ、ユキ早弁してる」
まだ10時なのにお腹が空いてしまったようで、勇気が先に弁当を開けていた。
「美咲さん、例のぶつを」
直也が美咲に向かって手を出す。
美咲はしぶしぶと自分のカバンの中をあさる。
そしてカレーパンとあんドーナッツを差し出した。
「ふふふ、おぬしも悪よのぅ」
「くっ、瀬谷先生の前で良いところ見せたかったからって、あたし、あたし……」
後悔の念にさいなまれる美咲をよそに、直也がさっそくカレーパンの袋を開けていた。
「何あれどーなってるの?」
事情を知らない勇気が翔に尋ねると、翔が汗をぬぐいながら力なく言う。
「うん、負けてくれたらお昼のパンをこれから1週間あげるって約束をしたらしい……」
「た、高い一勝だな……」
その日の美咲の質素なお昼は汗なのか涙なのか、少ししょっぱい味がしたそうな。