カモミール・ロマンス
疲れの見え始めた翔。
コーチが判断をくだす為に最後のタイムアウトを使って選手を集めた。
「山田まだ行けるか?」
「はぁ、はぁ……僕は」
肩で息をしている。
汗は一向に止まる気配がない。
コーチがそれを告げようとした時だった。
「翔なにやってんだ!」
応援席からの声に翔が顔をあげた。
「笠井先輩……美優ちゃん」
そこにはシャツを乱して、息を切らす笠井の姿があった。
「お前はオレの代わりに試合出てるんだからな。もっと嬉しそうにコートに立ち続けろよ!」
ぐっと握り拳を突き出した笠井。
翔は笑う。
「山田どうするんだ?」
「行けます……行かせてください!」
「よし、後5分だ死ぬ気で行ってこい!」
バシッと背中を叩かれた翔がかけていく。
笠井の登場に気合いを入れられたメンバーは、最後の力を振り絞り残り二分で同点へと持ち込んだ。