カモミール・ロマンス
「……知らん」
ぼそりと勇気がこぼした。
美咲も翔も見事にその言葉を聞き逃したようだ。
「「え?」」
そして改めて、それを言わなければならなくなった勇気がため息を吐いて、乱暴に言い放つ。
「だから、誰だかなんて知らないんだよ!」
翔も美咲も目をパチクリさせて、勇気のことを見つめていた。
「なんなのよそれ?じゃああんたなんで恋して……」
その言葉を言う度に、ほんのちょっと胸の奥がこそばゆくなっていく。
「……いや、それはその」
勇気は目を逸らしながら、頭をぼりぼりと掻く。
「どうゆうこと?ユキ」
翔までもが真剣に聞くもんだから、言葉を濁すこともできなかったのだろう。
観念した勇気が口を開いた。